音楽プロフィール

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 演奏家の人付き合いと その縁 
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このブログを読んで下さっているのは、同業の方より異業種の方達の方が間違いなく多いだろうから、クラシック音楽の演奏家の仕事上の人付き合いがどうなっているのか一寸紹介してみたい

私たち演奏家の人付き合いは、依頼された仕事の種類によって大きな違いが出る

最も短い付き合いとなる仕事は、例えば何かしら大きなオーケストラ絡みの企画があって、そこにソリストとして呼ばれた場合、本番前日のオケ合わせ,本番当日のリハーサル,そしてコンサート本番,打ち上げ‥ という流れとなり、即ち 二日だけしか 他のソリストはじめ合唱の方達,オーケストラのメンバーの方達との交流は無い
主催が地方であるなら、ソリストを数日に渡り拘束すれば自ずとそこに掛かる経費が増えることになるので、最短のスケジュールが組まれるのである

そのため、呼ばれる我々の側は、その演目が既にレパートリーとなっていなければならないし、一度の合わせで指揮者の構成意図を理解する力と他のソリストとアンサンブルを創り上げる能力と 場数を踏んだ豊かな経験値が必要になる

主催側から見れば、レベルの高いコンサートでお客様を満足させなければならない訳だから、そういう短期間で仕上げる仕事で必要になるのは、ひとえに腕の良さ,演奏実力に他ならない
二日の内に舞台の上で計3回しかお会いしないし 会話等も楽屋で僅かに交わす挨拶程度なのだから、性格の良さや人格等より圧倒的に先に述べたものの優先順位が高い



続いて短い付き合いとなるのは、或るアマチュアの合唱団のコンサートで宗教曲をやることになった時にソリストとして依頼され呼んで頂いた場合

その多くはピアノ伴奏による本番であるが、その合唱団の普段の練習場所に赴いて、数回 練習をご一緒し、リハーサルの日,本番当日‥ となる
この場合の最短は、3日間
これも主催する合唱団の経済力で変わるが、ソリストの歌う量が多い演目に関しては ソリストのアンサンブルの仕上がりを上げるために合わせの回数が増えるのが常である
回数設定が増えれば増える程、当然のことながら 最初に挙げた大規模の企画よりソリスト同士のコミュニケーションは深まり、その後の仕事をご一緒する切っ掛けになったりもするものだ



同じような付き合いの回数になるのは、大人数で行われるコンサートで2〜3曲 演奏する場合

伴奏合わせ数回と、リハーサル,本番‥ となる

この場合の伴奏合わせの回数が1回‥ ということは普通ないので、最短3回‥ ということは無いだろう
もしあったとしたら、そのコンサートは物凄く質の低いコンサートで、主催者がとてもいい加減で どうでもいい様な人間の集まりという事である

伴奏合わせの回数が多い程、これもまた同様に 担当となったピアニストさんとは、それなりに深い話をすることになる



オペラ公演の場合は、指揮者による音楽稽古,演出家による立ち稽古‥ と オペラ公演当日まで数ヶ月の間 頻繁に稽古場でお会いすることになるが、本番が終わってしまえば これもまた共演した方との接点は無くなる
ただ、キャストのみならず、合唱,オーケストラ,舞台裏を支えるスタッフの方達‥等 非常に沢山の人と三ヶ月以上はご一緒することになるので、公演が終わった後に精神的に何となく穴が空いたようなロス状態になることもある



挙げたように、私たち演奏家は、オペラ公演のように長期間に渡るものがあるものの、基本的にコンサート毎に付き合う人がガラリと変わるため、お互いの私生活がどういうものになっているかを知らない場合が殆んど

例外となるのは、或るグループを作り、同じメンバーで演奏活動をしている場合である
この場合は、本番でお会いする回数が少なくても 何年もご一緒することになるから、自然と親しくなるし、そして人柄と実力の優先順位にも変化が起きる

何年も一緒に活動するのに、人格に問題があって トラブルを起こす人が混ざっていたら、コンサート本番への流れが悪くなり 結果的に本番の質が落ちて仕舞いかねないし、何より 練習日が楽しくなくなるから、そういう問題がある人は自然と淘汰されて行く



私たち演奏家の仕事の中で、最も人柄や相性が大切になるのは、レギュラーの仕事である

毎月定期的にお会いするような仕事や、更に毎週お会いすることになる仕事の場合、その人柄だけでなく、今度は相性の領域も関わって来る

相性というのは 本当に不思議なもので、会話が弾むような相性の良い人とは ほんの短い間にコミュニケーションが深まり、お互いの色々を話して 昔からの知り合いであったような関係になる場合がある
一方 相性が良くない人とは、何年仕事をご一緒しても、殆んど毎週会っているとは思えない程 お互いのことを知らない

色んな人と同時にお付き合いをしている仕事柄、面白いほど違うのが分かるのである
それは 性別や年齢の違いを超えているので、多分もっと根本的なものなのだろう

私のブログのカテゴリーには 「絆」( ほだし ) というのがあって、その項を読まれたことのあるヘビーな読者の方には意外に思われてしまうかもしれないけれど、私は自分のやっている仕事の内、レギュラーの仕事ばかりは 楽しくやりたいと思っている

音楽を奏でている時間は 厳しい言葉も飛ぶ真剣な時間なのだから、それだけに休憩中など音が出ていない時間は、仕事をご一緒している人とは楽しく過ごしたいと想っているのだ

基本が都会育ちのお坊っちゃま等でなく、昭和の熊本の田舎者だからね w ‥ 人懐っこい面が顔を出す時がある
或る友人が相性の悪い人と会話も交わさない中でレギュラーの仕事をするのは地獄だ‥ と言っていたが、それは全くその通りだと私も思う

どうしても相性の良くない人と仕事をご一緒しなくてはならない場合は、自分も相手もそれを知って 互いに気をつけて言葉のキャッチボールをするよう心掛ければ、そのコミュニケーションの時間は心地よいものになるし、それは想像するより案外簡単に訪れる

そんな努力も面倒に思って やらない人は、ほんの限られた知り合いや,いつも同じ人としか仕事が出来ないため、演奏の場がいつまでも広がらない

私たちクラシック音楽のフリーランスの演奏家は、初めてお会いする演奏家の方とも きちんと一人でコミュニケーションを取って、その交流の中で また新たな活動の場所を得て行くものだからだ



人付き合いを遠ざけ,孤独を愛し,専ら実力を上げる事に重きを置いてきた私が、その長い演奏家人生の中でつくづく感じこんな事を言うのだから、演奏家同士の人づてに仕事が広がって行くのだという戒めは真実である

実力だけで仕事は広がらない
あっという間に演奏家人生は終わる
相性がどうだとか‥ そんな贅沢なことを言っている時間は無いのである









私たちクラシック音楽の演奏家の付き合いの有り様、如何でしたでしょうか

そのコンサートだけの付き合いとなり それ以後は一生お会いしない人もいれば、数年に渡り親しくお付き合いする縁となる人もいらっしゃる


「縁」 というのは、人の計りを超えたもの


こんな風変わりなブログを読んで下さったあなた様と私も、きっと 多生の縁 があるのでしょう













































コメント→【024/02/29 18:25


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