音楽プロフィール

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 神経ネットワークの構築 
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演奏家が自ら想い描いた音を奏でられるように成る為に日々トレーニングし続ける時、筋肉の動き,其の柔軟性や発達に着目している人は多いが、しかし結果に任され疎かになっている非常に重要なものがある
演奏家自身の身体,即ちその楽器を作り上げる上で、筋肉の発達以前に重視しなければならないのは、正しい神経ネットワークの構築である



人間の身体に在る神経は、中枢神経系末梢神経系とで成り立っている

中枢神経 (ちゅうすうしんけい) は、脊髄からなり、多数の神経細胞が集まって大きな纏まりとなっている領域で、全身に指令を送る神経系の中心的な働きをしている

脳も脊髄も人間にとって非常に重要な部分であるため 、脳は頭蓋骨 (とうがいこつ) によって,脊髄は脊柱によって守られている


一方
末梢神経 (まっしょうしんけい) は身体中に張り巡らされ、中枢神経と体の諸器官に分布する神経とを結んで情報の伝達を行っている

末梢神経系は更に、体性神経自律神経の二つに分けられ、そして 体性神経は感覚器からの感覚情報を中枢に伝える求心性神経と、中枢の司令を筋肉等に伝える遠心性神経からなっている

一般的に、求心性神経を感覚神経,遠心性神経を運動神経と言うことが多い
体からの情報を伝えるルートが感覚神経 ( 感覚器 → 中枢)、中枢からの指令を伝えるルートが運動神経 ( 中枢 → 骨格筋 ) である
運動神経は 筋肉を収縮させるだけではなく どの筋肉を弛緩させるかの指令も出している







さて
人間の身体の筋肉は、脊椎に最も近い深層筋,中間層,表層‥ と何層にもなる筋肉が複雑に絡み合って成り立っている

理想的な音を出すためには、それらの発達のみならず、その働きの優位性,即ち筋肉の動く具体的順位が
重要となる

正しい演奏フォームで奏でられた場合の筋肉の働く順位を例えば
【 A → B → C → D → E 】とする

この優先順位を自動的に働くようにするには、先に述べた神経ネットワークが そのように働くように構築されていなければならない

正しいフォームで繰り返し繰り返し飽きることなく長い年月トレーニングを積んで行くのは、正に神経ネットワークを正しく身体に構築させ、そしてその優先順位に適した筋肉群の発達を形成するためである

有耶無耶に筋力トレーニングで筋肉を鍛えても、それがそのまま演奏レベルが上がることに繋がらないのはそのためであり、筋肉中の神経の発達に至ることの重要性と、更には 正しく【 A → B → C → D → E 】と機能するには、その神経の発達順位が正しく形成される必要があるということ

正しく神経ネットワークと筋肉群が形成されたならば、その理想的フォーム自体を演奏家人生で維持して行くのは、実はそれほど大変ではない

トレーニングに膨大な時間を費やしているように見えないにもかかわらず、不思議なほどコンサート本番の舞台で常に素晴らしい演奏をしている或る演奏家がいるとしたら、その秘密はここにあり、そういう演奏家は筋力の衰えた老齢になっても、たとえ全盛期のパワーが落ちたとしても、その素晴らしい音の質は長く失われないものだ

間違った神経ネットワークで構築された身体 (楽器) では、いくら練習しても上手くはなれないし、それどころか間違った神経ネットワークは更に間違った順位のまま発達し、それに伴い 筋肉群も間違った発達をしてしまう

間違った指導者に長年レッスンを受けた者が、後に正しいテクニックを持った指導者にレッスンを受けるように成っても、中々上手く行かず矯正に時間が掛かるのは此のためである
【 A → B → C → D → E 】とあるべきを
【 A → D → C → B → E 】 と体に覚え込まされていたら、それを更正するのは頭で考えるより何倍も難しい

音楽大学で初めて学ぶ若い学生に指導者が もし
【 A → B → C → D → E 】 とあるべきを、事もあろうに
【 D → ‥‥‥‥ 】から始まるように教えてしまったならば、下手をすると声楽家なら声を潰し、夢ある人生が台無しになってしまう事だって実際にある

演奏経験が豊富になった演奏家が 一度間違って染み付いた筋肉群の発達順位と神経ネットワーク発達具合を再構築するのには、或る意味、全くの初心者が最初から正しいフォームでレッスンを受けるより 時間と労力を必要とする場合があるため、まず音楽大学で どんな指導者に当たるかが 幸運と不運の分岐点‥ そしてそれは丁か半かの運まかせなのが現実である



指導者によるものでなく、例えば、長い演奏家人生の中で、自らスランプに陥ってしまったとする

その場合でもそれは急にそうなったのではなく、どこかの時点からそこに至るまでのプロセスに問題があって、長い月日の演奏の連続の中で表面化しているものだから、失敗を悔やみ頑張って同じ努力をしても、間違った神経ネットワークを再構築しない限り、本番が来る度に 悲劇的にも舞台上で同じミスを繰り返してしまう

スランプ脱出で大切なのは、記憶にある上手く演奏出来ていた処に戻ろうとイメージしながら練習する事ではない
何故ならそこは既に間違いが潜んでいたかもしれない場所だからだし、そしてそんな抽象的なものを追うよりも、今をゼロとして 神経ネットワークと筋肉群の再構築をするような新鮮な感覚で身体 ( 楽器 ) を洗ってしまう方が結果的には確実で早い

私にも二十代後半にスランプの経験があって、皮肉なことにその時期は それまでの好成績を受けてコンサートの出演依頼が沢山来ていたため、舞台上 自らの不調を悟られないように演奏するのは非常に大変だったし、何より本番が怖かった

いい演奏が出来ていた処に戻ろうと努力していた期間が数年に渡った経験から、それが中々上手く行かないことには確信があり、そしてその時期があった故に、その時間の中で私は自分の楽器と真摯に向き合い,偶然ではない良い演奏をする為の正しい理論と、素晴らしい表現とは何かを学ぶ恵みを得たのだった



良い演奏となるか悪い演奏となるか
舞台上で起きたことには必ずその理由がある

舞台に魔物なんて居ない
上手く行った事も上手く行かなかった事も、全て己のせい

全て己のせいと思えた者が 本当の反省と本物の自信を手に入れ、次のステージの扉を開くのである








全身全霊で向かった本番で出た結果

分析と練磨

結果

分析と練磨

結果

分析と練磨



常に今が、ゼロである








飽きることなく馬鹿のようにこんな事に繰り返し向き合い続けることの赦された人生の、何と贅沢で素晴らしいことか

















































コメント→【024/03/28 18:23


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