続・徒然なるままに
【データで読み解く統一地方選】少子化対策、空振りの30年 なぜ未婚者に寄り添わぬ - 産経ニュース
2023/04/02 07:25
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【データで読み解く統一地方選】少子化対策、空振りの30年 なぜ未婚者に寄り添わぬ - 産経ニュース

https://www.sankei.com/article/20230330-XDYANIINRJNCJHB4IVFAALLKV4/?outputType=theme_localelection2023



2023/3/30 
産まれたばかりの赤ちゃんの小さな手。日本では少子化が止まらない

4年に1度の統一地方選。結果が国政に影響を及ぼすこともあり、各党は国政選挙並みの体制で挑んでいる。今、問われているものは何か。日本の現状と争点にデータから迫る。

「静かなる国難」がボディーブローのように効いている。昨年に生まれた赤ちゃんの数は79万9728人(人口動態統計速報値)で統計開始以来、初めて80万人を割った。そのペースは平成29年の推計より10年超も速い。

「これからの6、7年が反転できるかどうかのラストチャンス」。3月17日、岸田文雄首相は記者会見で改めて危機感をにじませた。政権が打ち出す「次元の異なる少子化対策」。児童手当など経済支援の強化▽子育てサービスの拡充▽働き方改革―の3本柱を掲げるが、内容にはどこか既視感がある。



「子育て支援」の域出ず

「1・57ショック」と騒がれたのは平成2年。前年に、女性1人が生涯に産む子供の推定人数を示す合計特殊出生率が戦後最低だった昭和41年(丙午・ひのえうま)の1・58を下回った。以降政府は30年間にわたり、少子化問題と対峙(たいじ)することになる。

平成6年に「エンゼルプラン」を、11年に「新エンゼルプラン」をそれぞれ策定。15年には、少子化社会対策基本法が成立した。その後も「子ども・子育て応援プラン」(16年)と続いた。

この間、家族関係社会支出、いわゆる子育て関連の公的支出は増加の一途をたどる。国立社会保障・人口問題研究所によると、令和2年度は10兆円程度でGDP比約2%。平成2年度と比べ7倍近い伸びだ。それでも令和2年の合計特殊出生率は1・33どまり。過去最低となった平成17年の1・26を踏まえれば、効果は見えない。

地方の自治体でも子供に関する予算は増加傾向にある。大阪市では、少子化対策をはじめとした子供施策を担う子ども青少年局の予算が、一般会計ベースでここ数年、2千億円以上で推移。だが、令和2年の合計特殊出生率は1・17だ。国の予算に加え独自の少子化対策予算を組む自治体もあるが、効果が出ているのは一部にとどまる。



こうした現状は、いずれの施策も子供が誕生した後の「子育て支援策」に過ぎないとの指摘があるように、根本的な解決策ではなかったことを示唆している。


男性軽視

少子化を考える上で向き合うべきデータがある。国立社会保障・人口問題研究所による出生動向基本調査(令和3年)では、「一生結婚しない」と答えた人の割合が男女(18〜34歳)ともに過去最高。男性で17・3%、女性は14・6%に達し、センセーショナルに報じられた。だが裏を返せば8割超の男女に結婚する意思があるといえる。

そして50歳まで一度も結婚したことがない人の割合「50歳時未婚率」は、同研究所の2年時点の算出で男性約28%、女性約18%と30年前の4〜5倍に上った。婚姻と出産の結びつきが極めて強い日本では、少子化の主因は未婚者の増加に行き着くのだ。

なぜ未婚化が進むのか。中央大の山田昌弘教授(家族社会学)は多くの実態調査などから、少子化は未婚の若者、特に男性に寄り添ってこなかった結果だと断じる。女性が結婚相手の男性に求める年収と、実際の年収にはかなりの開きがあるとのデータもある。

その上での「次元の異なる少子化対策」。山田氏は「今までやってきたお金の使い方に『上乗せ』するだけで少子化が解消すると思う方がおかしい」と手厳しい。大学など高等教育の無償化による経済負担の軽減や奨学金免除は「マスト」と言い切る。


「なりふり構うな」

一部では結婚や出産を条件に奨学金の減免・免除する制度導入を検討する動きがある。ある元閣僚は奨学金の返済減免制度に言及し「地方に帰って結婚したら減免、子供を産んだらさらに減免する」と発言。経済的負担を軽くする代わりに女性に出産を強いる「グロテスクな案」と批判にさらされた。しかし出産に対するインセンティブ(動機づけ)の付与は、他国の成功例を見ても方向性として大きく間違ってもいない。

例えばハンガリーでは、さまざまな税制上の優遇措置を講じる。子供を4人産めば、母親は所得税を生涯払わなくていい。2011年に1・23だった合計特殊出生率は20年に1・56まで上がった。

子供の貧困対策に取り組むNPO法人「キッズドア」の渡辺由美子理事長は「高等教育の無償化は将来的に必要だが、今まさに子供を産みたいと思っている若者の心に届きにくい」と語る。今年2月、政府の子供政策に関する会議で出産に伴う奨学金の返済免除を提案。「30年間効果を上げられなかったのだから、なりふり構わず手を打つべきだ」と訴える。

少子化に歯止めをかけるには、年間出生数が120万人前後で安定推移していた1990年代に生まれた男女が、結婚や出産の適齢期を迎える今後10年が正念場といえる。国も地方も、既存の発想からの脱却が不可欠になっている。(矢田幸己)











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