「………………賑やかだな……」
「冬想祭ですからね……。あちこちに店も出てますし」
「まつかぜさんはこういう場所は苦手なのですか?」
「いや、別に……。特に得意でもないが…………(あいつは、好きそうだな……)」
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「さあ、ついたわよ!」
「うわあー!!すごいすごい!店も人も見慣れない格好してる!」
「いやあ、丁度旅の癒術師が村に来てくれてよかったな!家族旅行なんて何年ぶりだか!!」
「今日は楽しみましょ!はい、○○、軍資金」
「え」
「たまには、お父さんとデートさせてちょうだいな」
「ははは、母さんは相変わらずだな!そういうわけで、○○。悪いがまた夜にここで待ち合わせだ!」
「え、ちょ…!……行っちゃったよ…………。まったく、自由なんだから!……ま、いいわ。お金は貰ったし、私もお一人様を楽しもうじゃないの!まずはー……あの店からよ!」
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「………………(自由にしていいと言われたし、土産を探すか…)む……?」
「うあ〜……可愛い……」
「……な…っ!?(何故あいつがここに!?)」
「むう…。欲しいなあ……可愛いなあ……」
「………………○○」
「へ?え、まつかぜ!?何でいるの!?」
「それはこちらのセリフだ。村守はどうした?」
「松風衆に頼んできた。父さんと母さんも来てるよ」
「今、村に癒術師は…?」
「旅の癒術師さんに頼んできた」
「そうか…………」
「で、まつかぜはどうしてここに?」
「オレは、主に着いてきただけだ。今は自由にしていいと言われている」
「そう」
「…………、ご両親は?」
「デートしてるよ」
「……お前を置いて…?」
「二人が自由なのはいつものことじゃない」
「…………仕方ない、今日はオレが付き合おう……」
「別にいいよ。まつかぜだって、久々の休みなんでしょ?」
「…………なら、言い方を変えよう。…今日は、傍に居させてくれ」
「……そこまで言うなら…」
「(これでナンパされる心配はないな…)……やれやれ……」
「んー…可愛い……」
「さっきから、何をそんなに熱心に見ているんだ?」
「これ!ユキンのぬいぐるみ!」
「ぬいぐるみ……。……意外と子供っぽいな…………」
「む。でも可愛いじゃない!大きいのは無理だけど…、ちっちゃいの買お!すみませーん!この子くださいな」
「………………(ユキンが好きなのか…)」
「……えへへ〜、買っちゃった!」
「よかったな」
「うん!次はどうしようかな。食べ歩きとか、どう?」
「お前がそうしたいなら、付き合う」
「ありがと!じゃあねえ…、あの屋台の食べたい!」
「ああ…。……走ると転ぶぞ」
「平気だよー!」
「まったく……」
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「(もぐもぐ)うん、なかなか美味しいね」
「そうだな。村ではあまりしない味付けだ」
「…………あ、ホットワイン発見!買ってくる!」
「だから、走ると…、聞いてないか……」
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「お待たせ。はい、まつかぜの分」
「オレのも買ってきてくれたのか…。ありがとう」
「どういたしまして!…(ごくん)あー…温まる〜…」
「ん、旨いな……」
「…………ねえねえ、ちょこちょこ見かける、民族衣装ちっくなあれ、なんなのかなあ……?」
「…あれは……、ミルカという民族衣装だそうだ」
「へえ〜…。結構可愛いね。いいなあ。買って帰ろうかな」
「……ミルカは、プレゼントしてもらうのが普通だ」
「そうなの?じゃあ、まつかぜ、買ってよ」
「っ!?げほ、げほ…っ!…………本気か?(ある意味それは、告白にもとれるが…)」
「だって、プレゼントしてもらうのが普通なんでしょ?じゃあ、自分では買えないじゃないの。お金は出すから、買ってきてよ」
「……………………(そういうことか…)…………わかった。買ってくるから、少し待ってろ……」
「はーい!」
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「………………(まさか、ミルカを買うことになるとは…。……あいつは多分、ミルカの持つ本当の意味を知らないんだろうが……)………………これにするか」
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「まつかぜ遅いなあー……。……、ホットワインおかわりしちゃお」
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「ただいま…」
「あー、お帰りぃ〜」
「な……っ!?この短時間に3杯も呑んだのか!?」
「ふふふ〜…あと一杯くるよお〜」
「まったく……!もう、やめておけ。二日酔いになるぞ」
「大丈夫だよう……」
「駄目だ。次の一杯はオレが呑む。お前は水にしておけ」
「う〜……まつかぜ、意地悪だあ〜…」
「意地悪で言ってるんじゃない……」
「ホットワイン、お待たせ致しました」
「ありがとうございます。すみませんが、水をください」
「畏まりました」
「むー…まつかぜのばかー」
「なんとでも言え……(ごくん)」
「……バカバカバカバカ…………」
「はあ……」
「お待たせ致しました、お水です」
「ありがとうございます。……ほら、水飲んで落ち着け」
「うー…………(ごくごく)」
「…………旨いワインだから、呑みたくなる気持ちはわかるけどな……、呑み過ぎはよくないぞ」
「…………むー…」
「…………ほら、ミルカ買ってきたから」
「!わぁーい!ありがと、まつかぜ!いくらした?お金払わなきゃ」
「…………いい。オレからのプレゼントだ……」
「いいの?やったね!ありがとう!」
「ああ……」
「えへへ〜…嬉しいなあー」
「……………………ごちそうさま。……そろそろ夜だな…」
「…?何かあるの?」
「確か、ダンスの催しがあると聞いている」
「へえ〜…」
「……参加するか?」
「……ううん、別にいい」
「そうか……。てっきり参加するって言うと思ったが……」
「……踊るより、まつかぜと一緒にいたい」
「……な…っ……!」
「……嫌…?」
「……、嫌なわけ、ないだろう……」
「えへへ〜…よかった……」
「……酔っているな…大丈夫か?」
「平気ー」
「………………、ちょっと来い」
「んー?なあに?どこ行くの?」
「いいから……(ぐい)」
「……?」
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「……ここなら、人目もないな…」
「まつかぜ…?」
「…………○○」
「ん?」
「…………っ、すまない……(喉に口付け)」
「んっ…、まつ、かぜ……?」
「…………オレも、酔ってるな……。いつも以上に、お前が可愛く見える…………」
「……酔わないと、可愛く見えないんだ……」
「いつも以上に、と言ったはずだが……?」
「むう……」
「…………、そうだ、さっきミルカと一緒に買ったものがあるんだ」
「…なに?」
「これを……」
「ユキンの、ネックレス……?」
「ユキン、気に入ってるみたいだったから……」
「可愛い……。ありがと…!」
「ああ……」
「…………年越しは、帰ってくる?」
「わからないが……、主に頼んでみよう。きっと許可してくれるだろう」
「うん。一緒に年越し、楽しみだね」
「ああ……」
「……、まつかぜ」
「なんだ?」
「(頬に口付け)」
「っ……!」
「お返し」
「……お前な…………(離れがたくなるだろう……)」
「じゃあ、今度は年末にね!」
「ああ…。一人で大丈夫か?」
「大丈夫。父さんと母さんと待ち合わせたの、そんなに遠くないから」
「そうか。気をつけろよ…」
「うん!またね!」
「ああ」
冬想祭のお話。