ジークベルトsaid
最近の父上も母上も夫婦仲が冷えていた。父上が母上に対して距離をおくことが多くなった。だからといって父上に別の女が出来て不貞をしているともいう話しもない。
「お母さん喜んでくれるかな。」
「その前にカンナ女王陛下の前で泥を落とすよ。」
花を取って泥んこになったカンナを綺麗にさせて服に着替えさせてから母上のいる部屋に向かった。
「母上いますか。」
「お母さん寝ているね。」
「また後でこようか。」
「えぇー。でも」
「カンナ行こう。起こすのは‥‥」
「アァァァァ」
「お母さんどうしたの?!」
うなされる母上の所へカンナが駆け込むと私は、母上を揺らし起こした。
「母上!母上!起きて!」
ぼんやりと瞼が開き瞳に写る息子達を見るとため息をもらした。
「‥‥‥ジークベルト。カンナ。」
「大丈夫?嫌な夢でも見たの?」
「うぅん。大丈夫よ。」
心配するカンナに安心させる笑みを浮かべる母上。
「母上全然大丈夫じゃないです。」
ハンカチを取り出すと母上の顔を拭いた。汗は、じっとり。脂がひどい。眼から大粒の涙をいくら拭いても次々と出て羽毛布団にシミが出来ていた。
「ジークベルトは優しいね」
「母上どんな夢をみたのかい。話したら楽になるのではないか。」
「予知夢を見たと聞いて信じてくれる。」
「母上予知夢ができるのですか?初めて聞く。」
「えぇ。ただお母さまのように危険を回避してきた予知夢ではないの。私の見る予知夢は、遅かれ早かれ近いうちに現実になる夢であるの。」
「えぇー。お母さん怖いこと言わないでよ。」
「母上の母上のことよりも予知夢で誰が出たのか教えて欲しい。兵士達から警戒を強化をするよう命令させる!」
母上が魘される程に恐ろしい予知夢なら回避をしなければ。
「夢で出たのは、苦しみだすマークス兄さん。」
頭を鈍器で殴られる衝撃を感じた。実際ジークベルトの頭には、鈍器で殴られて血を流していない。心のタガが外れて母上に矢継ぎ早に。
「父上が!どうして父上が何で苦しまれる!隠れた持病ですか。毒殺ですか。それは、いつに起こるのです!」
母上は、息を飲んだ。言うのが怖いのか。それとも夢のこと思いだそうとしているのか。ジークベルトには、焦りから早く聞きたかった。
「お父さんは、青い髪をした綺麗な女の人から刃物でも毒でもない何かで殺されたの。そうして女の人は、恐ろしい歌を口ずさんでいました。」
「歌?」
「えぇ。歌の初めが「三番目アリスは」と。終わりを聞く前に目が覚めて聞くことが出来なかった。」
「ジークお兄ちゃん!」
一度は、しゃがみ頭を両手に押さえた。
「母上ごめんなさい。私のせいだ!父上の命がこのままじゃ予知夢通りに。すぐに兵士達に「綺麗な青い髪をした女」のことを探して処刑させるよう命令出しにいきます!」
「ジークお兄ちゃん怖いよぉ。」
「その女の人を消せば父上のことを助けられるのだろう!そのくらい軽いものだ!」
「やめなさいジークベルト。」
張りのある厳しい声でカムイがジークベルトを止める。
「ジークベルト。一人の人間のためだけに髪が青い女の人を殺すしてはなりません。」
「いいえ重大なことです!父上に災厄はもたらすなら早めに摘み取るべきだ。」
カムイに背を向けジークベルトは、部屋を出ようとするとカンナは、マントを掴んだ。
「ジークお兄ちゃん待って!」
「離せカンナ!母上の現実になる予知夢をはやく防がないと父上が!」
「ジークベルトそのことで貴方に伝えることが二つあるから話を聞きなさい。ひとつは、マークス兄さんを助けられる方法が。」
ピタッとカムイに向き直った。カムイは、首から下げっていた飾りのあるペンダント差し出した。
「カンナこれは、予知夢を防ぐためにお父さんに肌身離さずロケットを見につけるように頼んで。」
「お母さんどうして僕にたのむんだい。お母さんは、お父さんのこと嫌いになっちゃったの?」
「いいえ。マークス兄さんは今でも大好きよ。見た目が同じでも私のことを忘れて距離を取られても。マークスお兄さんと本物の家族になれたことが嬉しいもの。」
「僕も大好きなお父さんとお母さんとの間に生まれてこれて嬉しいよ。これは、お父さんにちゃんと身に付けさせるようにお願いするよ。」
「カンナお願い。」
カンナに渡されたのは、カードの形をしたロケットの隣に小さな石がついていた。
「母上それで本当に父上が助けられるのですか?」
「えぇ。この飾りの石には特別の魔力が秘められています。これさえ着ければ飾りの石がマークス兄さんの命綱として発動してくれます。」
「具体的にどんな効果があるんだい?」
「予知夢に凶器が出ないものなら呪術と考えています。呪術をマークス兄さんにかけられずに別次元へ飛ばすか。違う人に移すものです。」
「後者の方が怖いよ。でもそれなら父上の命は、救われるね。ところで母上何故私は、小さな鍵の飾りなんだい。なにをすればいい?」
「これは、飾りでなくて本物の鍵です。」
「どの鍵に使うんだい」
カムイが立ち上がると自分の荷物から鍵のついた本を取り出してジークベルトに見せた。
「予知夢を防ぐのに成功したときにお母さんの日記をよんでもいいですよ。」
「?」
「???日記の鍵なのですか。今から読んでもだめなのですか。」
「だめです。」
母上がやんわり笑顔で断った。
「お母さんロケット開けられないよ。どうやれば開くんだい。」
「それは、お母さんにもわからないのです。」
「母上持ち物管理の把握していないのですか。」
呆れてカムイに言うジークベルト。困ったようにカムイが笑うと両腕でジークベルトの背中に回した。柔らかなで優しい香りがジークベルトの鼻孔を刺激され安心感を得た。
「母としてジークベルト愛しています。マークスお兄さんをどうか守ってあげてください。」
「母上?」
「お母さん僕にも!」
カンナが母の腕に入ろうとした。