おはこんばんは、なつめです。
今回はちょっとだけ感覚戻ったような気がしながら進めましたが実際のところわかりません。
やはり読みにくいのはデフォなのでご容赦ください…メソメソ
・闇表(最後の方だけ)
・一部、遊戯くん以外(?)のモブキャラが王様すきかもって描写があります。
・DSOD後の転生なのか、まるっきりの転生なのかどうかの解釈はご自由にどうぞ
・ネコチャアアンが出てくるけどたいしてネコチャアアンしてない。
・ネコの日話なのになぜかケガもするしデュエルもする
・設定が無茶苦茶
・カードキャプターさくらのミラーの回をモチーフにしました
よろしければどうぞ!
拍手ありがとうございます!
(前回のひどすぎて下げました)
微修正しました!すみません!
「にゃあ」
屋根の上で一匹の猫が鳴いた。
天窓から差し込む月明かりが学習机の上に散らばったカードを照らしだす。月の光を食べ、愛するものの姿で現れる、その夢魔の名は…。
ーー2.22
学校が休みの土曜。オレは遊びの約束をしていた相棒の家へと足を向けていた。交番を過ぎ、商店街を抜ければ亀のゲーム屋はもうすぐそこだ。だが、商店街を歩くオレの視界に入ってきたのは、
「相棒?」
少し離れた店のショーウィンドウを眺める相棒にオレは首を捻った。確かに今日は約束を取り付けていたはずだが、商店街で待ち合わせと言った覚えはない。しばしその場で考えていると、相棒がその店に入って行く。オレは急いでその店の前に立つ。
「ぬいぐるみ…専門店?」
そのあまりに馴染みのない店に足が止まってしまう。相棒の部屋にはクリボーやマシュマロンのクッションはあるが、全てゲーセンで得た戦利品だ。それに、本気を出したオレと相棒に取れないプライズなどない。わざわざぬいぐるみ屋に入る理由がオレにはわからなかった。
入口のショーウィンドウの前で入ろうかどうしようか逡巡していた時、ショーウィンドウの向こうの店内に相棒の姿を見た。
「あい…」
だが、
「きゃああっ!!!」
何人かの驚く声が外にまで響いた。
うずたかく積み上げられた人形の山。それを相棒が…突き飛ばして崩したなんて、我が目を疑う光景に、オレは言葉を失った。瞬間、勢いよく開け放たれる店の扉。そして、走り出して来たのは……相棒?
「相棒!!」
叫ぶオレに気づいた相棒は、僅かに足を止める。
「なにして…」
処理が追いつかず、疑問と批難と否定と動揺がないまぜになった声で問う。だが、相棒はオレににこっと笑いかけると、いこ?とオレの手を引き、走り出した。
「はぁあ〜、まだかなぁ…もう一人のボク」
ボクは店のテーブルにべちゃっと頬をつけ、だれていた。約束の時間は過ぎている。それでも、だいたい12時と言っただけで、別にきっちり約束したわけではない。もしかしてボクとの約束忘れてる?だとしたら、あとでぞうきんしぼりの刑だ。
ぬぅ、と眉間にシワを寄せて店のテーブルの上で突っ伏したままデッキのカードを弄る。
「?」
そこでボクは一枚のカードに気づいた。
「このカード…」
そのカードにはイラストとカード名がなく、効果テキストだけが書かれていた。
「こんなん入れたかなぁ」
頭をかいて体を起こしながら記憶を辿る。すると、勢いよく店の扉が開く。あ!
「もう一人のボク!」
しかし、期待に立ち上がったボクの目の前にいたのはじーちゃんだった。
「なんだじーちゃんか…」
ボクはため息を吐き出して再び椅子に座り直そうとする。だけど、じーちゃんの思い切り息を吸い込む音が聞こえたと思ったら、
「馬ッ鹿もーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!!!!」
鼓膜を貫く吹き出しで怒鳴られた。
「じ、じーちゃん!?」
驚いて店の床に尻餅をついたボクの元へじーちゃんがやってきて、今度はボクに縋り付いておいおいと泣き出す。な!なんなのさもー!!
「遊戯ー!!わしはお前さんを不良少年にした覚えはないぞい!!」
「ふ、不良!?なに言ってんのさじーちゃん!!」
「八百屋の三平が、駅前の放置自転車を蹴って薙ぎ倒したお前さんを見たと言うんじゃ!他にも交番に偽の通報をしたとか!工事現場の標識を別の場所に置いたとか!」
ええ!?
「ボクずっとここにいたよ!!」
そこでじーちゃんは、涙と鼻水だらけの顔を上げ、ずっと?と聞き返した。そして、
「じゃ、じゃあ商店街をアテムと走っていった遊戯は…?」
商店街を、もう一人のボクと、走っていった、ボク!!?
「ち、違う!ボクじゃない!!」
何が起きてるんだ!ボク以外のボクが存在して、悪さをしてる!?しかも、もう一人のボクもそれに巻き込まれてる!?
「ボク!もう一人のボクを探してくる!」
ボクはエプロンを外して店の外に飛び出した。
鬱蒼とした林の中を進む。
「こっちだよ」
相棒の道案内の元、ついて来たのは、近未来都市と言われる童実野町では珍しい獣道だった。確かこの辺りは、開発の話が出てはなくなってを繰り返してるとかなんとかとか、海馬がぼやいていたような気がする。
「もっと奥で落としたのかも」
にこにこした相棒が林の奥を指す。オレはため息を吐いて、相棒の示す方へ足を向ける。
「何を落としたんだ?」
そう聞けば、大切なもの、と答える。そして、
「たぶんこの奥」
草を掻き分け、指差した先に進む。だが、
「!!」
伸ばした足元の先に地面がなかった。
「しまっ…!」
嫌な浮遊感に足を踏み外したと悟った。寸でのところで捕まった崖の岩も、手の平に感じるこの感触では長くは持たない。
「…っ……」
やつは崖の上から、オレの姿を静かに見つめていた。
「お、まえは…ッ!」
しかし、問うオレの手は、次の瞬間、脆くなった崖の岩と共に空に投げ出されていた。
「はぁっ、はぁっ!」
必死に走りながらもう一人のボクを探す。町中で飛び交っているボクの目撃情報を元に偽物のボクを探す。そして、ボクは樹木の生い茂る林の入口に立っていた。
「もう一人のボク…」
ボクはそこに足を伸ばす。だけど、その時近くで、フーッ!っという殺気だった声が聞こえた。ボクの足元には…
「猫…?」
たくさんの猫がいた。
「キミたちは…」
言いかけて、遊戯!と威圧的な声がボクの言葉を遮った。
「こんなところで何をしている」
「海馬くん!」
そこにいたのは海馬くんだった。そこで、ボクは事情を説明しようと口を開いた。けど、それも海馬くんの、ふん、という言葉に飲み込まれてしまった。
「貴様の偽物が現れ、アテムと共にこの森に入ったことなどとうに把握している」
やっぱり!もう一人のボクはここにいるんだ!でも、海馬くんこそどうしてここに?もしかして、もう一人のボクを助けに…?
「やつを助けるだと?ふざけるな。この程度で死ぬようなやつに決闘王の称号をやった覚えはない!だが、この地の開発が滞り、童実野町全体の都市化を妨げているのも事実。貴様の偽物がなぜここに逃げ込んだかなどこのオレの知ったことではないが、そのくだらんオカルトシステムが我が社の開発を妨げているというなら容赦はせんぞ!」
つまり、ボクの偽物が現れたことと、ここだけ開発できない理由に関係があるかもしれないってこと?
「ふん、くだらんことに時間を割く余裕などない。さっさと…」
そこで、踏み出そうとした海馬くんの足元を何かが掠めた。
「なにっ…!」
気づけばボクらは、無数の猫に囲まれていた。海馬くんの足元を掠めたのもその一匹の爪だ。
「フシャー!」
歯を剥き出しにして怒る猫たちにたじろぐ。だけど、ボクは…!
「お願いだ。この先に行かせてほしい…」
この先には友達が待ってるんだ。ボクは、彼を助けに行かなきゃいけない。
「キミたちに危害は加えない…」
その鋭い目を見てはっきりと言い切る。それでも猫たちは、威嚇の姿勢を崩さない。
「…っ……」
どうして、何がキミたちをそんなに怒らせたんだろう。それは、ボクにはどうすることもできない問題なんだろうか。その時、
「にゃあ」
一匹の猫が、鳴いた。その声に、猫の威嚇がいっせいに止む。逆毛を立てた猫の間を、一匹の黒猫がボクの元に歩いてきて、足元に座った。
「キミは…」
学校へ行く途中、たまに見かけていた黒猫。その猫が僅かに頭を垂れたような気がした。すると、今まで敵意を剥き出しにしていた猫たちがいっせいに地面に伏せた。え、え?
「もしかしてキミは…」
猫の…王様……?
「にゃー」
それに、ボクの足元に座った猫は一言だけ鳴いた。肯定とも否定とも取れるその返事に、ボクはなぜか敬服したい気持ちになった。そして、猫はボクの前を走り出す。こっちだと告げるように。
「うっ…」
見上げた崖はかなりの高さで、あそこから落ちたのではさすがに動けないな、と痛む体に合点がいった。その時、足音がして、目の前に相棒が現れる。
オレはそいつに、なぁ、と話し掛ける。
「探し物があるなら手伝うぜ…、だから、」
相棒の姿に化けるのだけは、やめてくれないか?
「え…」
狼狽する相棒もどきにオレは軽く笑う。
「あいつが幽霊になったみたいで、あまり、いい気はしない」
そのオレの言葉に、相棒もどきはオレの傍に寄る。
「どこで…わかったの?」
仕種や声など、相棒にそっくりで、強く頭を打った状態では錯覚すら起こしそうだ。
「最初はあまりにそっくりで相棒が非行に走ったんじゃないかと思ったぜ」
だけど、
「相棒は、大切なものを絶対になくしたりしない」
落とし物やなくしものをするのは日常茶飯事だ。だけどあいつは、本当に失いたくないものは絶対に手放さない。それが自分にとってどれだけ大事かわかっているから。何に代えても、命を落とすような状況であっても、必ず守り抜くという意志がある。
「そういうやつなんだ」
だからお前も、その大切なものが見つかったら今度こそなくすなよ。
「……」
相棒の姿をしたそいつは、オレの言葉を黙って聞いていた。が、オレの意識もそろそろ限界らしい。
「目が覚めたらまた手伝う、ぜ…」
偽物の相棒だとわかっていても、その姿に頼みを断れない自分がつくづく滑稽だと思った。