『ボトルネック』
著者 米澤穂信
彼女が転落死した崖に弔いに来た俺は、そこでパラレルワールドへ飛ばされてしまう。
そこでは自分の代わりに、存在しないはずの姉がおり、両親は離婚せず、死んだはずの兄が生きている世界だった。
とんだホラ話に聞こえる俺の話を信じた姉は、「間違いを探そう」と俺の世界との相違点を炙り出す。
二年前に転校してきた俺の彼女が生きているその世界で、中学2年以降の成長した彼女を見られた俺は、彼女が事故死で処理されたが、彼女に向けられた悪意に気付かされる。
間違いは自分が誕生したことだったのだという思いに至った俺は、生きていたくないと本気で思った瞬間、元の世界へ戻れたのだ。
いや…重い話だった。
『警視庁「女性犯罪」捜査班 警部補 原真希 5グラムの殺意』 吉川英梨
原真希シリーズ続編。
同じ地区での中学生の死亡事故から、計画殺人を疑う原真希のいる女性犯罪捜査班は、一見関係がなさそうな、ママ友トラブルを調べていくうちに、ある精神科医がボランティアで行っている、発達障害のある子供を集めて遊ぶ会に行き着く。
精神科の女医は自らの子供で、遺伝子を操作してサイコパスを作り出し、研究していた。しかし、いくら遺伝子を傷つけたとしても、サイコパスになるには環境が大きく左右するのだ。
親に愛して欲しい、こちらを向いて欲しいが為に、サイコパスにしようとしていない双子の片割れが、殺人を犯す。親が子供に与えるものは、どんなものであれ愛であり、大きく影響するのだ。
原真希シリーズということもあり、あまり原真希は出てこないんだけど、それでも懐かしい面々が動いて楽しかった。このシリーズにはまだ続きがあるようなので、引き続き追いかけたい。
『しをんのしおり』 三浦しをん
ウェブマガジンなどのエッセイ集。
“企業戦士のお父さんのように、キッチンドランカーのお母さんのように、何も言わずに壊れていくのだ。”
パソコンについてそう書いていたんだけれど、何気ない文章にハッとさせられる。
『手のひらの幻獣』 三崎亜記
頭の中でイメージしたものを実体化することがてきる能力を持つ人達の話。なんか入っていけなかった。
『秘密の花園』
著者 三浦しをん
幼稚舎から大学までの女子高は、刑務所のように閉鎖的で、女子の楽園である。
愛された記憶があるから、愛してくれた母との別れが自分を苦しめるという見方もあれば、普段は鈍感で母の事を忘れているが、一つ一つ、生きていくことで母がかつて変えた電球を変えたり、母の面影を失っていくことにハッとしたり…
男性教員と付き合っているが愛されていないことに気づいている私は、誰の一番にもなれないことを知っている。その孤独感は大人になってから気付いてもいいものなのに…とそりゃ失踪くらいしたくなるよね。