恋愛経験も多分私より少ないし、チャラチャラも全くしてない彼女には心配要素はない。


彼女は元々アクティブな方で、友達と温泉や旅行に行くことが好きだ。恋愛、友情きっちり別れているタイプだから、勿論のこと相手が恋愛対象の性だからといって誰にでも欲情することはないだろうし、彼女が私以外には基本的にドライだったり、潔癖症だったりすることも知っているからか余計に心配はない。

基本的に自由な彼女は気付けば近所の友達の家に遅くまで遊びに行っていたり、友達と温泉に入ってホテルに泊まっていたりする。いつからそういう生活をしてきたかは知らないが、インドアで行動力のない私からすればそれは尊敬に値する趣味だと思う。

何より、元カノに植え付けられた「取り囲む女性にはムラムラする」という性の概念を、彼女からは感じないから良いのだが。

彼女と付き合うことが決まったとき、自分の趣味が嫌だったら辞めるから言ってほしいと言われた。私と出会う前からの元々の趣味で、何の心配もいらない友達との楽しみをどうこうするつもりはなくて、むしろ私と付き合ったからといってそこまで付き合いを変えてしまうことの方が人として嫌だなと感じたので、特に何も言わなかった。

当然、彼女と何処か行こうとするとその仲良しの友達とよく行く場所も提案されるわけで、出かける予定を立てる際に友達が、友達が、と言われるたびに、私の中で当初予定していなかった気持ちが芽生えつつあった。

これは多分、嫉妬だなぁ。

一番抱きたくない感情だ。
これを一度覚えてしまうと、私は壊れるのが早い。
何も心配ないのは変わらないが、それでも距離が近い仲良しの友達が居ることに、少しだけ嫉妬してしまう自分がいる。私の前で見せない彼女の顔をその子は知っているんだろうなって、羨ましくも感じる。

勿論私にも特別仲良しの友達が居るわけで、彼女とお付き合いが始まったからといって、特に問題がない限りは今まで築いてきたその子との付き合い方を変えるようなことはしたくないし。多分、それを求めてくる人とは合わないだろうし。本人からすれば、私も同様にいくら嫉妬されてもどうしようもない普通の相手なのだから。

元カノは、周りに居る女性が全員彼女を見ているような気がしていたし、元カノ自身もまた手のひらで全ての人を良いように転がして遊んでいるような気がしていた。だから嫌だったのだ。元カノが誰かと出かけるたびに、元カノが何を考えているのかわからなくなっていったから。そんな人が温泉や旅行なんて、それこそそれだけで浮気だと思えるくらいにはギラギラしていた人だったからな。

気遣い屋の彼女にそんな思いを伝えたら旅行や温泉を控えてしまうかもしれないし。彼女の生活の一部を、リフレッシュできる方法を、友達との大事な時間を、奪うようなことはしたくないのでそこまでどうこうしようなんて思ってはいないんだけど。


黒い私がたまに顔を出す。
友達友達うるせぇな…って、そんなことを一瞬考えてしまった。


これから沢山色んなところに行けばいい。
彼女は友達や職場の後輩にも私のことを自慢したりしているようだし、そう考えたら優越感だって出てくるのに。

元カノのときみたいにドロドロした嫉妬ではないけど、まるで子供みたいに拗ねてるのを隠しながらなんともない顔して彼女と話してる私は、相変わらずだな。


そういえばこないだ彼女も私に嫉妬を仄めかしていたな。お互い様だしバカップルだな。そう考えたら気楽だ。それでも私は今日も彼女にじわりじわり嫉妬している。